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No.20 変態かなぁ… [short-short]

「なぁ、ワタナベ。俺の話、聞いてくれないか?」
バイトの同僚であるナオトが、ロッカールームで帰り支度をする
俺の横でニタニタ笑いながら意味深なことをいうもんだから、
本当は早く帰ってビデオ屋にでも行こうと思っていたのに、思わず
「じゃあ軽く居酒屋でも寄ってく?」
乗り気はないのに調子よく返事をしてしまった。
俺のリアクションにナオトがあまりにも嬉しそうな顔をするから、
面倒な話でないことだけを願って、ビールでも引っ掛けていくことにした。
店に入り、頼んだ中生のジョッキを喉を鳴らしながら流し込むと、
ナオトが語りはじめた。
「実は俺、生まれて初めて、女の人を好きになっちゃったんだ。
自分自身でも意外だったっていうか、不思議というか、
よくわかんないんだけどさ。俺のタイプっていうか、理想の具現化というか、
もうズバリなわけよ。顔といい、プロポーションといい、最高なんだ。」
嬉々としているナオトを見て、うわ、面倒くせぇ!と思ったけど、
仕方ない、これもまた付き合いってやつだ。
「で、名前はなんつーの?」
別に興味もなんもないけど、間の手代わりに訊いてやる。
「朝倉まな。いい名前だろ?、いい響きだろ?。
まなちゃん、結構な巨乳なんだぜ。たぶんEカップとか、
Fカップとかありそうだな」
「触ったの?、揉んだの? Fカップ?」
「いいや、見ればだいたいわかる」
「わかんねーぞ、女は。寄せたり上げたりしてるかもしんねーじゃん」
「それはともかく、俺が好きになったのは顔なんだよ。
もうスッゲー可愛いの!」
「いくら言葉で説明されてもわかんねーよ。写メとかないの?
あるんなら、もったいぶらないで見せろよ!」
「初めて見たのが1カ月くらい前なんだけど、俺、毎日見てるの。
朝起きて見て、大学から帰ってきてすぐ見て、バイトから帰ると寝るまで
夜中まで見てるの。俺もうメロメロなわけよ。俺って変態かな?」
ナオトはにやにやしながらケータイの写真フォルダから選ぶと、
液晶に現れた「まなちゃん」の画像を
水戸黄門の印籠のように俺の目の前に差し出した。
「うわ、すげー可愛いじゃん! もう告ったのか?
つーか、付き合ってんのか?」
「まだだよ。告るどころか、話しかけてもいねえよ。
毎日まなちゃんを見てるだけ、それって変態かな?」
「話かけてもねえのに毎日見てるって何それ? つーか、誰だよこの子…」
「AVに出ていた女の子。借りてからもう毎日何回も見ているんだよ。
いやぁ惚れた。マジ惚れた! なぁワタナベ、俺って変態かなぁ?」
「1カ月前にレンタルしたAVを毎日見てる?」
「うん。ファンレターでも書こうかな。なぁ、俺って変態かな?」
「いや、変態じゃないけど、おまえ、それ延滞だぞ。
はやく返さないと凄い金額になっちゃうぜ、延滞金!!」


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