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No.47 「携帯電マ」 [short-short]

 何ぃ、オレが携帯電マ、持ってるかって?

 持ってたら貸してくれ?家に忘れてきた?

 ずいぶん大胆なこと言い出すやつだな。

 ポケットにも入るコードレスのやつ持ってるだろうって?

 突然に携帯式の電マ、って言われてもねぇ。

 もちろん知っているけどさ、いきなり貸してくれって言われても…

 俺が持ち歩いているわけないだろ。男だぞ。

 例のなんだ、その、ブルブルするやつだよな。

 日本人ならみんな持っているだろうって?

 んなわけないだろ。アダルトビデオとか見過ぎなんだよおまえ。

 アダルトビデオの小道具だろ。

 プライベートで持っているとしたら、それ女だろ。

 女とのコミュニケーションには絶対欠かせないツールなのにどうしてるのか?

 女との仲良くなるためには絶対に欠かせない道具だろうってか。

 そーかー、お前の場合はそうなのか。

 でも絶対欠かせないって言われてもなあ。

 男と女が結び合うにはバイブスが肝心とか盛り上がらないとか主張されても、

ねぇモノはねぇんだよ。

 やるとしたって、バイブとか電マとか、文明の利器なくても平気だぜ。

 第一、そんなのなくたってできるよ、コミュニケーションぐらい。オレ、

コミュ障じゃないんだし。

 まったくお話にならないって、大げさなやつだな。電マぐらいで。

 そんな機械にたよらないで、自分のモノで勝負しろよ。

 じゃあいいです?公衆電話さがしてきますって、なんだよそれ!

 あ、まさか、おまえが今まで言ってたの、携帯電話じゃねーの! 

 まーったく、マジで滑舌悪いんだよ、おまえ。

 つか、携帯電話なんて言わないで、スマホって言えよ!




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No.46 「試験勉強」 [short-short]

 「なあもうすぐ定期試験じゃん」

 同じクラスのシュウイチが猫背でポケットに手を突っ込みながら近寄ってきて

こういった。めんどくせぇなあ。

 「だから?」

 「だからさ、おまえさ、このクラスではわりとちゃんと勉強してる方じゃん、

俺とちがってさ」

 「だからどうした?」

 「聞いてみようかと思って」

 「何を?」

 「英語と数学は受験科目だからみんなやってっけど、おまえ理科ちゃんと

やってる」

 「やってるよ。それで?」

 「やっぱすげーわ。さすが学年トップだけあるわな」

 「でも、理科だぜ。面倒くさくない?」

 「中学生のうちにちゃんとやっておかないと、つーか、基本が身についていないと

高校大学で困ることになるから中学生のうちからちゃんと勉強しておけって、パパも

言ってたしね」

 「ふーん、で、どこでやってるの?」

 「学校でもだけど、塾とか、家出とか

 いきなりシュウイチはにたぁと笑い、教室中に聞こえる声で言った。

 「おーい、聞いちゃったぜ。こいつ、リカとちゃんとやってるんだってよ。

エッチなことやってんだぜきっと」

 なんだこいつ?アホのくせしてくだらねぇ言葉遊びで俺を引っかけやがったな。

 「ああ、やってるよ」

 「おーい、こいつ自分から白状したぜ。リカとやってるってよ」

 周りにいたクラスの連中が俺たちを白い目で見ている。

 しかたねぇ、こいつには悪いが、一発ダメージ喰らわせてやるか。

 シュウイチの襟元を掴んで耳元を引き寄せ、まわりに聞こえないように小声で

言ってやった。

 「リカだけじゃねーよ、ひとつ上のおまえの姉ちゃんともやってるよ!!!!」

 

 

 


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No.45 「コウインヤノゴトシ」 [short-short]

 コウインヤノゴトシ?


 なんだその言葉。


 諺…どーゆう意味なんよ?


 悪かったな、アタマ悪くて。聞いたことねぇよ、そんな言葉。


 なんだって、速くて、あっという間だってこと?


 そうなんだ…。


 知ってたよ俺だって、コウインぐらい。子供じゃねぇんだ。


 漢字でだってわかるぜ。口淫だろ。クチに淫らって書くんだろ。


 クチで淫らなことするってことだろ。前に辞書で調べたことあんだよ、


すごいだろ。


 淫らじゃわかりにくいけどさ、つまりその、クチでやるんだから


フェラとか、そのあれだ、クンニだろ。


 なんでそんなにウケて笑ってんだよ、そんなに可笑しいこと


言ってるか俺。


 でもよ、ヤノゴトシってのは、なんなんだ?


 ゴト師ってパチンコでインチキやる人なんだろ。


 それは間違い?そんなこと言ってたら他人に笑われる?あっそうなの。


 ヤノゴトシのヤは弓矢の矢、ゴトシは何とかのようだっていう言葉。


 矢のようだっていうことなのか。


 で、口淫がねぇ…速いってか。


 それが矢のように速いっていう意味なのか。


 あ、わかった!ほうほうほう、なるほどね。


 口淫、矢の如しか。


 なるほどねー、はいはいはい。


 フェラチオとかクチでやるのは気持ちいいからすぐ、あっという間に


出ちゃう、イっちゃうってことだろ。だからちょっとぐらい気持ちいいことも


しばらくは我慢しろって意味なのか。


 え?違う?そんなこと言ってると常識を疑われる?恥ずかしい?


 恥ずかしいのは早くイっちゃうことじゃねーの?つまりそのなんだ、


早漏とかいうやつ…


 え?コウインヤノゴトシとは、月日のたつのが速いことのたとえ?


 コウインとは漢字で光と陰と書く…


 なんだ、コウイン云々っていうのはつまり、オーラルセックスの話じゃ


なくて、時間が経つのは矢のように早いという意味なのか。


 なんだ、そうならそうと、さっさと早くイってよ、じゃなくて言ってよ!


 


 


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No.32 「迷い」 [short-short]

 その男は、ファスナーに手をかけてゆっくりと開くと大事なモノを取り出した。

 すでに目前には縦長の翳った溝、目指すべき穴があった。その穴にそれを入れる

つもりで取り出して右で手の指で掴んではみたものの、男はそれまでの動きを止めた。

どうやら待ち望んでいた快楽の瞬間を前にしているというのに、この期に及んで

迷いが生じているようだ。

 さっさと入れちまうか、それとも我慢して止めるか?、どうするんだ?

男は自問した。

 後悔はしないと言えるのだろうか。入れたら入れたで自分が待ち望んで

いた満足が得られることは分かっている。でも同時に、失うモノもある。

それが道理だ。なにもかも自分のモノになるなどということはできないこと

ぐらい、いい大人なのだから、百も承知だ。選択は、本当に正しいのだろうか…

男は自問を繰り返す。

 (少しの時間、確実に幸せになれるんだぜ。何を戸惑うことがある?)

 男の心の中で何者かが囁く。

 (そんな刹那的な快楽に身を任せて、本当にいいのか?おまえには

他にすべきことがあるのではないか?)

 男の心で別の何者かが反論する。

 「分かってはいるんだよ…」

 躊躇する気持ちと欲望が葛藤しているのだろう。男が指を添えたところに

ある玉はその穴に近づいたり、離れたりを繰り返している。

 男はゴクリと唾を飲み込んだ。

 (男だろう、さっさと決めちまえよ。気持ちよくなれるんだぜ、さあ…)

 (これから先のこと考えているのか?本当におまえはそれでいいのか?…)

 (飢えていたのだろう、そうだろう?本能の赴くままに任せりゃあいい

んだよ、簡単なことだよ)

 (病気になったって、知らないよ。いろんな人が買ってるんだよ。

さわってるんだよ。不潔かもしれないし、どんなバイ菌がついて

いるかおまえ、想像してみろよ)

 (平気だって!ほとんどの人は何ともないのだから。よほどのことが

ない限り、絶対大丈夫だよ)

 (絶対なんて、あるわけないじゃん…)

 (とりあえず入れてみろよ!すぐに、どんなに素晴らしいかすぐわかるよ。)

 (でも、入れちゃったら、その快楽に見合うだけのものを、必ず失うんだよ。

いいのか?)

 葛藤は、続いていた。

 (いいぞぉ、おまえ。早く突っ込んでみなよ)

 (そういえば、おまえはまだ身体の中に入れた経験ないんじゃなかったか)

 (なにごとにだって初めてはあるさ)

 「いいや、入れちゃえ!」男は呟くと、指を添えていたそれを穴にいれ、その

少し上にあったボタンに指先で触れた。

 ガゴン!

 予想外に大きな音がして、下の口に清涼飲料水が現れた。

 男は自販機の釣り銭口からコインを取り出すと、小銭入れにそれを納めて

ファスナーを閉めた。


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No.31 オスプレイ [short-short]

 ねぇねぇ、何ヒソヒソ話してんの、おまえらふたりで。
 隠し事はよくねぇぞ、面白い話だったら俺も仲間入れろって。
 え?オスの話?なんだそれ。
 もしかしておまえら、男同士で、そういう関係なの?
 ちげーだろ? 変態だと思われちまうかもよ。な、モーホはやめとけやめとけ。
 なんたって、あれは見た目が美しくない。ズーレと比べてみ?気持ち悪いだけだって。
 そんなことないって?見ただけでとにかくすごい? 驚いた? 感激した? 
 俺も一度経験してみるべきだって?嘘だろ。余計なお世話です。遠慮します、辞退します。
 一度体験してみなければわからないって、好きになるかもって?
 いや、無理だから。そっちは。
 そういうプレイは俺的にまったく興味ないから。
 今まで見たこともないカッコやスタイル?、そりゃそうだべな凸と凸じゃ。
 アメリカでじゃあ普通に普及してるのに日本は遅れてるって、そりゃそうだろうな。
 お国柄っていうか、そういう人がいっぱいいるんだべ?
 ゲイっつーの?
 エノラ・ゲイ?知らんよ、そんな人。
 上りつめ方がまたいいって? ハンパないって?
 一気に上へ、うわーって感じで行くの? へぇ。
 急にガーって上りつめて頂点行く?それからがまたすごい?
 身体を回転させる? 初めて見た?
 スリリングねぇ。ま、よくわからなくていいけど。
 へ?おまえら、ふたりで一緒に体験してきたって、ウソだろう。
 結局やっちゃったのかよ。
 どっちがやって、どっちがやられようが、どっちでもいいけど。
 あーあ、だね。
 あー、いいからいいから、俺はノン気で十分、外野で十分。
 はいはい、童貞の高村光太郎でいいですよって。なんとでも呼んでください。
 大丈夫だって、俺、口だけは固いから。いいふらしたりしないから。
 しゃべってこっちが勘違いされたらやだし。
 俺、普通の高校生でいいの。ヒマさえあればひとりで慰めるさみしい高校生でもいいの。
 ん、ふたつ付いてる? ナセル? アナルじゃなくて? 
 わんかねーな!?!?!俺、ノーマルなんだから専門用語使わないでよ。
 軍隊じゃ当たり前って、そりゃそうだろな。うん。
 えーっ!!米軍基地の近くに行った?
 好きな人がいっぱい集まったって、うわぁこりゃまた強烈な話だなぁ。 
 なにぃ!、スマホで写真撮ってきたって?いいよいいよ、見せるなって。
 でもちょっとだけなら見たいかも。ちょっと見せてみ…
 …………………………………………………………………
 えっ?飛行機? なんだ、オスプレイか… 


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No.30 どっちがビッチ? [short-short]

 おい、あそこ見てみろよ。いい女だぜ!


 え、どこどこ?


 ほら、あっち!女の二人連れ見えるだろ。

 ボディにぴっちりフィットしたミニのワンピース着てる子たちだよ。


 お、いるいる。でも俺、今日コンタクトしてねぇからあんまよく見えねぇんだ。


 あっちの女、良くね?すげー胸してんじゃん。でけぇぜ、あれ。


 え?どっちだよ。


 ほら、あっちのビッチ。すぐやらしてくれそうだぜ。軽そうな女の方。


 え?ビッチ?って、どっちのこと?


 おっぱいでかい方だよ。すごいBしてるぜ、あれ。

 90センチ以上あるんじゃね?たまんねーな。いいカラダしてんなー。


 わりぃ、俺、今日コンタクト入れてねぇんだって。見えねえからわかんねぇよ。 


 ビッチっていえばわかるじゃん。エロいぞあの女。あんなのと付き合いてえな。

 なぁ、思い切ってナンパ、行く?


 いいけどさ、どっちがビッチって、おまえはそれでいいのかもしれないけど、

 俺にしたらNOだよ。

 ちょ、ちょ、見てみて。こっち見てる。俺たちに気づいたっぽくね?

 はら、絶対こっち意識してるって。ナンパしに行こうぜ!


 そうかぁ?、別に普通にしてるだけじゃねぇの。自意識過剰じゃね。おまえ。


 そんなのどうでもいいいいからさ、ナンパ、行こうぜ。 


 いいけど、おまえ、二人のどっち狙い?


 さっきからいってるじゃん。Bでかい方だよ。


 だから、どっちがデカいかなんて、こっからじゃわかんねーんだって。 


 だからビッチの方だよ。頭から見ていったら、まずBが目に飛び込んでくるだろが。


 あのさ、おまえ先刻からビッチだとか、Bとかいってるけど。

 どっちか、っていったら、WとHじゃねぇか。Bって、なんか違くない?


 あれ?おまえケツ派なんだ、知らなかったよ。おまえにそんな趣味があったなんて。

 ま、たしかに細いWでHがバーンとしてる女と後ろからやるのは最高にいいけどな。

 やっぱり俺はBに一番先に目が行くな。おっぱい星人なのかな俺、へへへ。

 あんなのに挟まれてスリスリされてみてえよ。気持ちいいぜ~。


 おまえおかしくね?どっちかって問題なら、そんなのWとHに決まってるじゃん。


 なんか、変なところに拘るな、今日のおまえ。


 だからさ、さっきから何いってるじゃん。どっち、っていったら、

 BITCHじゃくて、WHICHだろ。Bなわけないじゃん。


 


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No.27 某電力会社 [short-short]

「社長!、今年の夏の電力ピーク時の、消費量予想ですが、かなり厳しいです。

企業はもちろん、個人のお客様たちにご協力お願いして、かなりの省エネを

徹底しなくてはならない状況かと思います。このデータをご覧ください」

社長室長が、書類の束を片手に発電量予測について力説しはじめた。

「そうは言うがね、去年だって、なんとかなったじゃないか。

今年もなんとか乗り切れると思うんだよ、大げさに言ってもしょうがないだろう」

「しかしですね、浜岡原発は依然として再稼働の見込みが立っていないのですよ。

火力発電をフル稼働させても八月上旬のピーク時は、かなりヤバいです。

ブラックアウトしかねません。早めに対策を出しませんと、高校野球放送時に

停電なんてことになったら、一般市民は黙っちゃあいないと思います。

まして、所轄県内の学校の試合の時に、停電でもされたら、矛先が向くのは

私たち電力会社ですよ。そうなる前に、節電のお願い廻りを、社長!」

「しかし、去年も節電をお願いして廻った時も、ひどい言われ方したじゃないか。

地震だって、津波だって、俺が悪いわけじゃないのに、俺の責任みたいな…。

こっちは頭下げてお願いしているのに、俺のせいみたいにされちゃかなわないよ。

いきたくなんかないよ」

「今年は、去年とは違うんです。異常気象なんです。気象庁でも前年以上の

警戒が必要だといってるんです。どれだけ真夏日が続くのか、わからないんですよ、

今年は」

「首都圏じゃないんだから、心配しなくてもなんとかなるだろう。

それに、一度ぐらいブラックアウトした方が、原発再稼働のコンセンサスだって、

とりやすくなるんじゃないのか?」

「社会インフラを支える団体のトップが、そんな態度でいいのでしょうか。

私には甚だ疑問です。もっと危機感もってください」

「大丈夫だよ、東電さんや関電さんとは、うちは違うんだ。

特に、ウチは夏には強いんだ。応援してくれる人だっていっぱいいるんだ。

なんたって、TUBE電力っていうぐらいだから」


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No.26 エコ発電 [short-short]

「知事、それでは我が県のエネルギーへの取り組みは、自然エネルギーの

活用を積極的に進める、ということで、よろしいのですね?」

「うむ、それで私のイメージアップになるというなら、

やらない訳にはいかんだろう」

○○県知事の二期目の森畑は、秘書に向かってぞんざいに言った。

「で、具体的には何をエネルギーにした発電を推進するんでしょう。

やはり、太陽光ですか、風力ですか。地熱は、我が県には適切な

場所はありませんし、潮汐とか温度差とか、海関係も、地理的にキツイかと」

「そんなものは審議委員会に任せりゃいいんじゃないのか?」

「いいえ、あくまでも言い出しっぺは知事、ということにしなくては

知事の好感度はアップしません。知事が決断してリードしなくて…」

「太陽光発電とかでいいんじゃないのか? 陽が当るただっ広い土地があれば

いいんだろう、適当な場所なんて、いくらでもあんじゃないのか?」

「でもそれ、隣接の県はもうやっていますよ。インパクトないですよ。

知事連会議でまた馬鹿にされますよ」

「それじゃ意味ないな」

「発電量より話題作りが大切です。どうせなら他の県がやらないこと、

やりましょう、知事!」

「風力発電っていいんじゃないの?できそうな場所、ある?」

「我が県には、一年を通じて風が吹くような場所は、ありません」

「他はどうなの?なんかないの?」

「バイオマスという方法も、ありますが、原料になる農業資源がありません」

「なんだ、結局どれもダメじゃん」

「可能性としては、小水力発電装置というのもありますが…」

「なんだ?それは…、詳しく教えてくれよ」

「小さい方の水の力で発電できるエコな発電方法です。出力は小さいですが、

これを県内に千機、二千機単位で設置するというのはどうでしょう。

発電所一件誘致して建設するのよりは、予算的にも遥かに廉価です。

頻繁にメンテナンスというか監視する必要がありますが、

発電所を建築しても維持管理に作業員が大量に必要になりますから、

コスト的には同じようなもんです」

「なるほど、小を合わせて大にするエコエネルギーっていうことだな。

いいじゃんそれ!あとで記者発表の時間があるから、その時にでも

このアイデアをぶち上げよう、きっとニュースになるはずだ。

いいねぇ、君のアイデアは」

知事の言葉に、秘書は満面の笑顔を浮かべた。

そして定例記者会見の席。知事は自信たっぷりの表情で、語った。

「我が県は、次世代の電力確保と安定化に向けて、自然の力を利用した

エネルギーの導入を積極的に推進します。いま考えておりますのが

小水力発電です、その普及に県を挙げて取り組んでいこうと思っております。

初期段階として、県内に千件から二千件の設置を考えています」

即座に記者から質問が出た。

「千から二千カ所というのは、具体的にどの場所が候補になっているとか、

決まっているということでしょうか。流域とか、規模とか」

「そんなのは決まっています。県内の公衆トイレからですよ、小水力って

いっているじゃないですか」

会見場の袖で見守っていた秘書は、やっちまった……と呟いて頭を抱えた。

 

 

 


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No.25 ワイヤレス [short-short]

オフィスにある自販機の前で由梨はアタシを見つけると

ペットボトルを片手に小走りに近寄ってきた。

「聞いて聞いて!」

「なになに?、どうした?、なんかあった?」

あたしたちの会話はいつも決まったように、こんな遣り取りから始まる。

「この前さあ、飲み会かなんかの時にさあ、時代はワイヤレスだよって

話になったじゃん?」

「なったなった、なったことある」

調子よく答えたものの、うーん思い出せない。そんな話したっけか?

合コンだっけか、社内の打ち上げだったかな、わからないけど

由梨が言うからそんな話したんだろ。

「だからね、アタシもワイヤレスにしようと思って、買いに行ったの」

「へえ。人の話ちゃんと聞いてるんだ。でもアンタ、ちゃんと繋がった?」

「それが全然だめなの。繋がってくれないの」

「ま、初めはそうかもしれないねアタシんときも男に手伝ってもらって

なんとか、だよ。協力してもらわなきゃ無理だわ」

「だよねー。だから買って帰ってすぐ、同居中の彼氏に見せたんだ。

見て見て!って」

「そしたらやってくれた?」

「全然。あ、そう、とか言っただけで、なんにもしてくれないの。

がっかり。すぐやってくれるだろうって思ってたのに」

「まあ設定自体は面倒ちゃ面倒くさいからね。でも一度繋がっちゃえば

あとはサクサクだから。気持ちいいよ」

そこに合コン友達のサクラコが、入り込んできた。

「なんの話をしてるかと思いきや、ワイファイかよ~あんたらもやるねぇ、

何ワイワイしてるかと思えば、ワイファイの話とは、なんて駄洒落にも

なってねえかハハハ…」

あーあ、こいつが入ってくるとよけい話がめんどうになるんだいつも。

「で?、初期設定はマニュアル通りに進めたの?ちゃんとパスワード設定した?

使うのは、iPhone?iPad?どっち?」

休憩も終わりそうだから、アタシが由梨に問いかけると、

なにやら小首かしげて困った表情。

簡単な問いかけに、何もたついてるんだよ。

「ワイヤレスの通信に環境にするんでしょ?自宅を…」

アタシがそう言うと、由梨はまた気まずそうに応えた

「ワイヤレスって、その、あたしブラジャーの話だったんだけど…」


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No.24 ポニーテールとシュシュ [short-short]

「なんて格好で飯食ってんだよ…」
家に入るそうそう、冷蔵庫から発泡酒を取り出した夫のマサルは
あたしのことを見ながら、投げやりな言葉を投げつける。
 ソファで胡座かいてテレビ観ながら猫背でコンビニ弁当を掻き込んでたアタシは、
「しょうがないじゃん、今日も仕事忙しかったんだから」
「忙しいのと行儀悪いのはカンケーねえと思うけど」
語尾を強めた言葉が、テレビの音声を聴き取り難くした。
確かにお行儀いいとは言えないけど、疲れてるときっていつも
アタシはこの姿勢になってしまう。
事実だけに、深入りすると面倒だから、別の話を振った。
「何食べてきたの?」
「駅前で、牛丼だけど」
「そう…」
「残業だから遅くなる。なんか適当に食べて来て、ってメール送って
きたのユーコだろうが」
「来月決算なんだもん、うちの会社。仕方ないのよ。食事作れないのは
悪いと思ってるけど」
「飯のことなんか、別にいいけど」
ほらまた語尾が上がる。機嫌が悪い証拠。
「どうでもいいけど、もう少し片付けられないのかね、この家の中」
ネクタイを緩めて、缶の発泡酒を呷ると、マサルはダインイングの
椅子に浅く腰掛け足を投げ出して、背もたれに肘をかけて首を回している。
 なんでそんな格好してるあんたに行儀のこと言われなきゃなんないのよ。
片付けのこどだってそう。そんなこと言うなら読みもしない新聞、
二紙も取らないでよ、という言葉を喉で止めて、飲み込んで
「今月乗り切れば、余裕できるはずだから。そしたら徹底的に片付けて
掃除もするから」
精一杯の譲歩をして言葉を返す。
「どうでもいいけど、なんで食卓の上におまえのパンツが置いてあるわけ?」
「えっ、嘘?」
ソファから立ち上がってダイニングテーブルの上を見ると、昨日畳んだ洗濯物の
横にくしゅくしゅっとした布の小さなかたまりが見えた。
「バッカじゃないの?、なんでこれがパンツに見えるわけ。これシュシュでしょ、
どー見ても。髪の毛、後ろで束ねるの。なんでこれがパンツに見えるかなぁ」
アタシはシュシュを手にとって、マサルの目の前でリングの輪を広げてみせた。
「じゃあ、さっさとしまえよ。今髪の毛束ねてんの、一個ありゃ十分だろ」
え? あたし髪の毛後ろで束ねてる?あれ?、一個しかもっていないはずだけど…。
おおむろに頭に手を当ててシュシュを外して見ると、アタシのパンツだった。
やばい、あたし相当疲れてる……



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