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No.36 「バーでの出来事」 [日記]


 シングルズバーで飲んでいたら、いい感じの女と隣り合わせになった。

 仕事帰りに時々寄らせてもらっている店だが、この店に独りで来る女性客と

いうのは珍しい。

 ワンピースの袖からのびた二の腕がとてもか細くセクシーなわりに、胸の

ボリュームは十分すぎるほど。大きく開いた胸元にはやわらかそうな谷間が

のぞいてる。

せっかくのチャンスなので、勇気を振り絞って話しかけてみたら、なかなか

フレンドリーな性格らしく、いろいろ気が合って話が弾んだ。

 年齢的にも俺とそう変わらないこともあって、好きな音楽のジャンルだとか、

映画の話でひとしきり盛り上がり、いい感じになってきた。とても傍からは

初対面とは見えないだろう親密な空気がふたりを包みはじめた。 

 グラスが進むのに比例して時間も刻々とその針を進め、ふたりともいい

感じに酔ってくると、だんだん女の方は「いやだぁー」などと笑いながら

俺の肩を叩いたり、俺の太股に手を置いたりと、しきりにスキンシップを

繰り返すようになってきた。

 そして、俺の得意の下ネタのジョークにも上半身をのけ反るほどに大笑いして、

俺の肩にしなだれかかってきた。

 彼女の首筋からはパヒュームの香りが漂ってきて、おれの鼻孔を刺激した。

 お、これはイケるな、と思った。

 そしてタイミングを見計らって彼女の肩を抱き寄せると、俺は耳元に口を

近づけて小声でそっと囁いた。

 「せっかく仲良くなれた楽しい夜だ。もう少し一緒に過ごしたいな。

このあとホテル、どう?」

 大抵の女はこう囁くと、そのままの姿勢で黙って頷く。

 けれど、彼女の反応は違った。

 「んー、今日は、そこまでの気分じゃあ、ないかな」

 彼女は俺の目を見つめて、コケティッシュ微笑んだ。

 「こんなに気分が高ぶっているのに?」

 「もっとよくお互いのことを知ってからにしましょうよ、

まだ、ちょっと、そこまでじゃなくて」


 「最後の一歩には踏み込んで、俺を受け入れるわけにはいかないってこと?」


 「うん。またの機会にして、ね」

 わかった、そういうことか。

 「またの機会なら、ホテル行き、オッケーしてくれるんだね。

じゃあ十分ほど待ってて…」

 俺は彼女の返事も聞かず颯爽とカウンターの席から立ち上がり、

バーの扉を開けて外へ出た。

 数分で、紙袋を片手にバーに戻ってきた俺は、それを彼女の前に差しだした。

 「ほら、買ってきたよ、電動マッサージ器、略して電マだ。君が望んでた、

股の機械だ。さあ、ホテル、行こう!」


 


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